「名探偵と大祭司キリスト」
あらゆる文学の主人公は、
キリストの型になっています。
人間は、キリストを見たいのです。
文学における主人公は、
「キリストを俗なる形に落とした型」
と言えます。
推理小説の名探偵は、
「この世」(目に見える)と、
「あの世」(目に見えない)をつなぐ存在です。
「この世」とは、「一見、真実に思える間違った推理」です。
「あの世」とは、論理によって明らかにされた「真実」です。
「この世」と「あの世」の調停・とりなしをするのが「祭司」です。
小説の名探偵は「この世」と「あの世」を一致させて、
平和を回復する存在です。
小説の最初に起こる殺人は、「原罪」に当たります。
原罪よる罪ある人間を神と和解させるのがキリストです。
小説内では名探偵なしでは事件は解決しないように、
キリストによってのみ、平和があるのです。
唯一の道であり、真理なのです。
あらゆる事実が名探偵のもとで一つになるように、
世界のすべてはキリストを指しています。
すべてをとりなすので、大祭司ということになります。
名探偵は「真実を言い当てる人」に過ぎませんが、
キリストは、その存在が真理です。
キリストは「真実を言った」のではなく、
自身が十字架に掛けられて上げられました。
「殺人犯」の身代わりに罪を背負ったのです。
キリストは祭司(さばく)であると同時に、
生贄(さばかれる)でもあるのです。