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「文学とは何か (3)十字架の主人公」

物語には主人公が存在します。

主人公とは何か。

主人公とは、「十字に架かり、復活する存在」です。

すなわち、主人公とはキリストの型になっています。

「十字に架かる」とはどういうことか。

主人公は必ず、「ピンチ」を迎えます。

そうでなければ物語にはなりません。

「敵(悪)」は、「低俗さ」・「卑劣さ」を強みに優勢に立ちます。

ミステリー小説で言えば、「殺人は簡単で卑劣」ということになります。

あるいは、悪は「人質」を取ります。

「囚われの身の姫を救出する」などという物語の類形も、

「真実を隠す殺人犯」も、本質は同じです。

悪をなすのは「簡単」であり、主人公は不利であり、苦境に陥ります。

主人公は「磔(はりつけ)にされる」のです。

しかし、「十字」には「磔」以上の意味があります。

それは「聖と義(正義)」によってさばく祭司でもある、ということです。

聖は「縦」、義は「横」で、十字になります。

ミステリー小説ならば、

聖(正)は「真実を見定める」ことであり、

義は「つじつまが合う(証拠、裏付けを得る、悪を砕く)」ことに当たります。

また、聖は「縦」であり「神と人」を表し、

義は「横」で「人と人(地上)」を表します。

つまり、正(真実)と義(状況)を合致させる「とりなし」をする、

ということになります。

名探偵が「うーん」と唸(うな)りながら、推理をはたらかせるとき、

彼は十字架に架かっており、十字を切る祭司(天と地をとりなす)でもあります。

彼は自らが十字に架かかって、すべてを引き受けることで、

「天(真実)と地(状況)」に和解をもたらせるのです。

この「十字架に架かる主人公」によって、

真実が明らかになり、罪ある状態が清められ、和解・平和がもたらされ、

正(生)が回復します。

これが復活に当たります。

この祭司の有様を描いたものが「主人公」ということになります。

世界の主はキリストであり、

文学における主人公は、その有様を目に見える形で肉に落とした型になります。


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